酒粕を有効活用しておいしく、きれいに

酒粕を有効活用しておいしく、きれいに
酒粕とは、言わずと知れた日本酒を絞ったあとの副産物のこと。古くから漬物や甘酒などに活用されてきた酒粕。その栄養素や機能性から、いま、注目の食品でもあるのです。

酒粕とはそもそも、どんなものでしょう

酒米と麹、水を混ぜた「もろみ」を搾り、液体として抽出されたものが日本酒、残った固形物が酒粕です。酒粕は、再利用されない限り産業廃棄物となってしまうものですが、廃棄するにはもったいないほどの栄養素が含まれ、機能性も高いものです。長野県では古くから粕漬けや奈良漬け、粕汁などが食文化として根付いていることから、酒蔵の店先やスーパーなどの店頭には、季節になると酒粕がどっさりと積み上げられるほどで、酒粕を有効活用している地域といえます。

酒粕は大きく2種類に分けられます。ひとつは日本酒を搾ったままの板状の「板粕」。酒造りが盛んな冬季に発売になります。板粕のようにきれいな板状にならなかったものを「ばら粕」と呼び、板粕よりも、やや、やわらかいのが特徴です。もうひとつは酒粕をタンクなどで踏み込み、練ってやわらかくした「練り粕」。夏場に発売されるものでばら粕よりもさらにやわらかく、野菜などを漬けるのに適しています。練り粕はやわらかくて漬けやすいこともありますが、夏までに熟成してコクが増し、おいしく野菜が漬かるのです。酒粕は熟成とともに色づき、長期熟成のものは褐色にまでなるものもあります。

左から時計回りに「板粕」「練り粕」「ばら粕」

酒粕には「たんぱく質」「炭水化物」「食物繊維」「ビタミンB群」「ミネラル」「アミノ酸」「ペプチド」「葉酸」など、じつにさまざまな栄養素を含んでいます。とくに健康と美容にうれしいおもな機能は次の通りです。
◯腸内環境の改善(便秘解消、消化促進)
◯脂質代謝(肥満抑制)
◯肝臓の保護
◯認知症予防
◯ガンの予防
◯美白
◯保温・保湿
◯老化抑制
ほかにも、糖尿病の予防や骨粗しょう症、アレルギーの緩和なども報告されているそう。日焼けをしたときには酒粕を湿布のようにして貼るとほてりが取れるなど、古くから民間療法としても日常生活に取り入れられてきたのが酒粕です。

参考文献
「酒粕中の血圧上昇抑制効果を持つペプチドと 機能性食品素材への展開」(入江元子・大浦新・秦洋二、2006、日本醸造協会誌101号7巻)
「清酒及び醸造副産物の機能性」(伊豆英恵・鎌田直樹・髙橋千秋、2015、日本醸造協会誌110号4巻)
「健康と美容に貢献する「酒粕」の成分」(渡辺敏郎、2012、日本醸造協会誌107号5巻)

料理に活用して身体のなかから元気に

手軽に作ることができて毎日食べられる酒粕料理といえば粕汁や甘酒です。粕汁の独特の香りが苦手という人は、味噌汁に少しずつ加えて慣れていくのがおすすめです。山椒や七味、しょうが、ときには黒胡椒など、薬味を加えることでも飲みやすくなります。夏は冷やすとすっきりいただけます。もうひとつ、定番料理といえば漬物。塩もみして水気を切ったきゅうりに粕を和えた即席の粕もみも良いですし、粕床をつくってきゅうりやナス、大根、にんじんなど漬け込めば、年中通して楽しめます。板粕をオーブントースターでこんがりするまで焼いて砂糖醤油でいただくのも、長野県ではポピュラーな食べ方のひとつです。

手前右から時計回りに、「酒粕と味噌とレモンのディップ」「きゅうりの粕もみ」「甘酒」

酒粕に味噌などで軽めに味をつけて保存容器にいれておけば調理の際に便利です。肉や魚に塗ってひと晩おくだけで、酒粕の香りと旨味が移り、コクのあるおいしさを楽しめます。モッツァレラチーズや水気を切った豆腐などを漬けても、新しい味わい。酒粕にクリームチーズや味噌などを好みで加え、野菜をつけてディップとしていただくのもおすすめです。
ただし、酒粕はアルコールを含む食品。奈良漬などを少しつまむ程度であればアルコール成分は問題にならないとはいわれていますが、子どもや妊婦は粕汁など火を通してアルコール分を飛ばしたものを楽しむようにしましょう。

ガーゼの上から酒粕をのせれば調理の際に取る手間や焦げ付く心配がありません
板粕は焼いてから切った方がきれいに仕上がります

料理以外にも、酒粕は大活躍です。その機能性として「美白」「保温・保湿」「老化抑制」が挙げられる通り、美容に活用するのもおすすめ。入浴剤として利用したり、水や日本酒で伸ばしてパックにしたり。入浴剤として利用する場合は適量をガーゼなどに包み、軽く揉みほぐしながら入浴します。白濁したお湯はしっかりと温まるうえに肌はしっとり。使用後、ガーゼのなかには固形物が残ります。浴槽の詰まりの原因になりかねないので取り除いて捨てましょう。蒸気でアルコールや酒粕独特の香りがより強く感じるかもしれません。苦手な人は少量ずつ試しながら使ってみましょう。

適量をガーゼに包みます。板粕でも、練り粕でも

酒蔵オリジナルの酒粕商品を

冬の板粕、夏の練り粕と、それぞれの季節に酒蔵から発売になり、多くの蔵が自社のオンラインショップで購入可能です。酒粕そのもののほかにも、長野県内では酒蔵オリジナルの酒粕商品も数多くつくられています。さまざまな酒粕商品をぜひお楽しみください。

白馬錦で知られる酒蔵・薄井商店の粕汁は、NHKでもおなじみ、長野市在住の料理研究家・横山タカ子さん監修。化学調味料・保存料無添加

オンラインショップで酒粕の加工品が買える酒蔵

*商品の入替えや季節限定などのため品切れの場合もあります

オンラインで酒粕が買える酒蔵

*季節商品のため販売していない場合もあります
*店頭でのみ販売している酒蔵もあります