季節の⾷卓に、季節の⽇本酒を

季節の⾷卓に、季節の⽇本酒を
春夏秋冬。四季の変化に富んだ⽇本のなかでも、⻑野県の四季の移ろいは、とりわけ変化に満ちています。待ちかねた春の芽吹きや開花の美しさ、照りつける太陽と繁る緑、⼭々が錦をまとう秋、⼀⾯を真っ⽩に覆う冬の雪。⾃然が⾝近にあるからこそ、その変化は⽇頃から⾊濃く感じられ、楽しませてくれます。四季の変化にあわせて⾷卓も変わっていきます。⼭菜からはじまり夏野菜、きのこに根菜やジビエ。⼤地の恵みにあわせていただきたいのが、やはり四季の⽇本酒です。ワインでは秋深まる頃のボージョレーが有名ですが、⽇本酒に季節があるの? と思う⼈もあるかもしれません。ところが、⽇本酒ほど季節を映したお酒はないと⾔って過⾔ではないのです。新酒から夏酒、ひやおろしまで、四季折々の⽇本酒のたのしみをご案内します。

冬 ⽣まれたての⽇本酒を楽しむ

⻑野県のほとんどの蔵では晩秋から酒造りがはじまり、早いところでは10⽉頃から新酒の知らせが届きます。新酒ができると酒蔵の軒先にかかっていた茶⾊くなった酒林と呼ばれる杉⽟が外されて、新しい⻘々とした酒林が掲げられます。酒林の杉が⻘いときこそ、新酒が完成した知らせです。
この季節、まずいただきたいのはあらばしりです。お酒を絞る過程は順に「あらばしり」「中汲み」「責め」とありますが、あらばしりはもろみの重さで⾃然と出てきた最初のしぼりたての⽇本酒を指します。圧をかけないので雑味が少なく、華やかな⾹りと新酒ならではの荒々しいほどのフレッシュさが特徴。果実を思わせるようなフルーティさもあり、⽇本酒初⼼者の⼈にもおすすめです。
この時季に登場する⽇本酒は加熱処理をしない〝⽣酒〟が多いため微発泡を感じるものがあり、それも新酒やあらばしりの醍醐味です。
⽇本酒は冬の間をかけて順々に仕込むので、春先まで次々と新酒が発売されます。この時季ならではの⽣まれたての⽇本酒を存分に楽しみましょう。

写真提供:中善酒造店

春 おりがらみに⽣酛造りのぬる燗

春によく⾒かけるのが、澱を絡んだその名も〝おりがらみ〟と呼ばれる⽇本酒です。淡雪のような春霞のような⾵情で、かすみざけ、ささにごり、うすにごりなどとも呼ばれます。こうした美しい呼び名も⽇本酒ならでは。⽴春や桃の節句などにもよく似合います。あらばしりなどに⽐べると、⽶の⾵味がより味わえるものが多いのも特徴です。
酒造りも終盤を迎える頃、⽣酛造りの⽇本酒が登場してきます。⽣酛は速醸酛に⽐べて造りに時間がかかるうえ、寒さが⼀段と厳しくなって蔵のなかの乳酸菌が安定して増えている環境が造りに向いていることから、春が近づいてから発売になるものが多いのです。
最近の⽣酛造りのお酒はシャープでまるで⽩ワインを思わせるような⼝当たりのものもありますが、昔ながらのどっしりした⽣酛造りの⽇本酒も健在です。⾃然に⽣まれた乳酸の独特の酸味と旨味が⽣酛ならでは。濃い味付けの料理によく合います。初⼼者の⼈には飲みづらいかもしれませんが、そんなときはぜひ少しだけ温めて飲んでみてください。やわらかい⼝当たりに変化し、⾷中酒に最適です。春といっても、⻑野はまだまだ寒さの残る⽇が多いもので、花⾒も冬物のコートの準備が必要なほど。そんな⽇の⽣酛造りのぬる燗、絶品です。

夏 暑い⽇にさっぱりといただく夏酒

夏が近づいてくると、アルコール度数が⾼く味わいの濃い⽇本酒が飲みづらくなるという⼈もいるかもしれません。そんな⼈にぜひ飲んでいただきたいのが「夏酒」です。夏酒に決まった定義はありませんが、おおよそ次のようなものが挙げられます。

① 低アルコールの⽇本酒
② 酸味のある⽇本酒
③ ロックで楽しむ⽇本酒
④ スパークリングタイプの⽇本酒

① 低アルコールの⽇本酒

そもそも⽇本酒は「原酒」で19度前後のアルコール度数があり、多くが加⽔して15度前後で販売しています。そこにきて夏酒はアルコール度数13 度ほど。ただ加⽔しただけでは味が⽔っぽく感じられてしまうものですが、そこは各酒蔵の腕の⾒せどころ。ほど良い味わいと低アルコールならではの、のど越しの良さが楽しめます。

② 酸味のある⽇本酒

かつて⽇本酒の酸は⾼い評価を得られませんでしたが、今は⾷⽂化の変化などにより⽇本酒の酸は積極的に取り⼊れられるようになってきました。たとえば、焼酎によく使われる⽩麹を⽤いた⽇本酒などは、柑橘を思わせる美しい酸が楽しめます。

③ ロックで楽しむ⽇本酒

あえてアルコール度数が⾼く、味わいの濃い無濾過⽣原酒などを選んで、ロックでいただくというのも夏酒らしい楽しみです。もったいない! という声もあがりそうですが、ライムなどを軽く絞ったり、桃やメロンなどを潰して割れば、⽇本酒初⼼者でもカクテル感覚で気軽に飲むことができます。

④ スパークリングタイプの⽇本酒

スパークリングタイプの⽇本酒も増えています。なかにはシャンンパーニュ製法で造る本格的なものも。お⽶のやさしい味わいと⽇本酒ならではのフルーティな酸が特徴。アルコール度数も低いものが多く夏はするりと飲めるほか、贈り物にもおすすめです。

⾒た⽬にも夏を意識したさわやかなボトルやラベルが多いのも夏酒ならではの特徴です。どれを買おうか迷ったら、まずはジャケ買いで楽しむのもいいかもしれません。

秋 熟成して真価を発揮するひやおろし

秋といえばもう定番ともなったのが「ひやおろし」です。ひやおろしは、江⼾の頃から伝わる⽂化。新酒が劣化しないよう、⽕⼊れと呼ばれる加熱処理を⾏ってから貯蔵し、ひと夏を越して熟成させ、秋になって再び⽕⼊れすることなくそのまま出荷するもので、秋あがりとも呼ばれています。
今では全国でも9⽉9⽇をひやおろし解禁⽇と決めて、その⽇からひやおろしは続々と発売されていきますが、その先駆けとなったのは⻑野県の取り組みでした。発売⽇を決めることで消費者の認知も上がり、さらにひやおろしをラインアップする酒蔵も増えています。
なぜ9 ⽉9 ⽇かといえば、この⽇は⼈⽇(七草)、上⺒(桃)、端午、七⼣などで知られる五節句のひとつ、重陽の節句にあたります。重陽の節句は別名、菊の節句ともいわれ、中国では酒に菊の花びらを浮かべて邪気を払う習慣があります。秋の⾵物詩でもあるひやおろしだからこそ、この節句に合わせたのでした。
ひと夏越して熟成させただけあって、その味わいは円熟したものとなり、⾹りも控えめになってくるため、常温でも、お燗をつけてもおいしくいただけます。どんな⾷事にもよく合うのが特徴ですが、名残の夏野菜に加えてきのこや栗など、秋ならではの味覚と合わせていただきましょう。

流通や技術の向上で、いつでもどこでもなんでも⼿に⼊る時代のように感じられますが、体になじみ⼼豊かにしてくれるのは、その季節にあったものを⾷したり、愛でたりすることではないでしょうか。ぜひ⽇本酒も季節とともに味わうものとしてお楽しみください。

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「生酛(きもと)造り」のお酒を飲んだことがありますか? 伝統的な酒造りの手法を用いた濃醇で味わい深い酒として、日本酒通の間で人気を呼んでいます。ここでは、生酛造りとはどんな手法で、どんな味わいの酒になるのか、酒造りの基本を踏まえて、わかりやすくご紹介します。 記事を読む